ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(82歳)が、ローマ法王としては、38年ぶり2度目となる来日をします。
この時期の来日の理由と、日本との関りについてまとめました。
型破りと言われるフランシスコ法王の人柄にも触れました。

目次
ローマ法王来日の理由
2013年3月13日に、第266代ローマ教皇となったフランシスコ法王は、様々な意味で、型破りな法王であり、人物です。
フランシスコ法王とは?
法王としては、初めての南米(アルゼンチン)出身で、イタリアからの移民の家庭で育ち、権威から距離を置くイエズス会の出身でもあります。
大学では化学を学びました。
法王になってからも、法王の住むべき宮殿のような司教館ではなく他の司教たちの住む寮に居住し、お抱えのリムジンの使用を拒否して地下鉄やバスを使うなど、清貧を貫いています。
軍事政権下の政情不安なアルゼンチンで、貧しい人々のために布教活動を続けた経験から、貧しい者への配慮を怠らず、彼らは神様とのかかわりを真剣に必要とし、神父も「彼らと交わることで多くのことを学べる」と述べています。
「私は貧しい人々による貧しい人々のための教会を望む」
「イエスは蔑みの言葉も、断罪の言葉も言いません。わたしたちが聞くのは、ただ愛の言葉、回心に招く憐れみの言葉だけです」
サッカーファンであるなどラテン系の気さくさと、明晰な頭脳、体力、軍事政権下での体験などさまざまな苦悩の経験を持ち、人の苦しみに共感する暖かな魂をもつ人柄ゆえ、西欧では「ロックスター法王」と言われ、大変な人気を博しています。
「浮世離れした教会を親しまれる慈しみの場に変えた」「教義に重点を置いてきた教会を奉仕の場に変えた」ことを理由として『TIME』の2013年のパーソン・オブ・ザ・イヤーに、選ばれています。
例えば、現在でも、ツイッターのフォロワーは、1800万人を超えています。
"https://twitter.com/pontifex"
(和訳版) "https://twitter.com/chuokyo_pope"
2017年に公開された『ローマ法王になる日まで』は法王フランシスコの激動の半生を描く実話映画です。
フランシスコ法王と日本との関り
日本との関りで有名なのは、2017年末に「こどもにこういう顔をさせてはいけない」と、「戦争がもたらすもの」とのメッセージをつけて、フランシスコ法王が配布を指示した「焼き場に立つ少年」の写真カードです。
原爆投下後の長崎で撮影された、亡くなった弟を背に火葬を待つ少年の姿です。
日本でも「この少年は、血がにじむほど唇を噛み締めて、やり場のない悲しみをあらわしています」という説明文をつけて、カトリック中央協議会が20万枚を全国の教会を通して配布しました。
また訪問地の中でも、長崎は、フランシスコ法王の出身修道会であるイエズス会のフランシスコ・ザビエルが16世紀に布教を始めた地であり、昨年潜伏キリシタン関連遺産としてユネスコの世界文化遺産に登録された地域でもあります。
この時期に来日の理由
フランシスコ法王はこれまでも、2014年に、「人類はヒロシマ、ナガサキから何も学んでこなかった。・・・原子力エネルギーは人類に莫大な利益をもたらしたが、科学は人間性を破壊することにも使われてきた…核兵器が使用されている今日、まさに広島と長崎のように我々はゼロからスタートしなければならないだろう」
2015年8月9日に「「両都市(広島、長崎)への原爆投下は70年もの長い時を経てもなお私たちに恐怖と嫌悪を誘発させる」
「広島と長崎への原爆投下は科学と技術のゆがんだ使用がなされたときにおきた、人間性の巨大な破壊の象徴である」と核に対する強烈な反対を表明し、核兵器廃絶に積極的な姿勢を見せています。
来日の大きな理由の1つとして、世界で初めて原爆が投下された広島、長崎を訪れて、世界に核兵器廃絶の必要性を訴えることにあると思います。
この時期を選んだのは、現在の世界情勢への危機感があると思います。
・米国トランプ政権がロシアとの中距離核戦力全廃条約から離脱し、使える核兵器の開発に舵をきった。
・2017年の核兵器禁止条約の署名批准手続きが始まったが、核保有国、日本、韓国が応じず、必要な批准50か国に届かず、33か国にとどまる(条約発効は50か国が批准)。
さらに、
・自国第一主義のポピュリズムが世界に広がり、弱者への寄り添いや小国へ気遣いが希薄になっている。
・日本が抱えている若者の自殺や孤独死の問題など、貧しい人々へ寄り添うことが必要。
・弱者や自然災害に大きな影響を与えている地球温暖化をはじめとする環境問題をなんとかしたいという思い。

ローマ法王来日で最も注目されるイベントとは
法王は、これまで、6年間で、ブラジル、中東、韓国、アルバニア、フランス、トルコ、スリランカ、フィリピン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボリビア、エクアドル、パラグアイ、アラブ首長国連邦など多くの国を訪問し、メッセージを発信し、ミサを行っています。
2014年には、韓国を25年ぶりに訪問し、当時の朴槿恵大統領と会談し、セウォル号の沈没事故の犠牲者の遺族らのためにミサを開きました。
日本のカトリック信者は44万人(人口の0.35%)に対し、韓国のカトリック信者は2013年で540万人(10.4%)へと増えた事情もあったのでしょう。
<フランシスコ法王来日の日程>
11月23日夕 タイから東京羽田空港に到着
24日 長崎市松山町の長崎爆心地公園(核兵器に関するメッセージ、日本二十六聖人殉教地西坂公園訪問、ミサ(県営球場)。
広島平和記念公園(平和のための集い)
25日 東京にて「東日本大震災被災者との集い」に参加、
天皇陛下と面会、東京カテドラル聖マリア大聖堂での「青年との集い」に参加、東京ドームでミサ 、安倍首相と会談し、「要人および外交団らとの集い」に参加する。
26日 イエズス会員とのプライベートなミサを行い、病気や高齢の司祭を訪問、上智大学でスピーチ、正午前にローマへの帰国の途に。
死刑廃止制度の廃止を訴えているフランシスコ法王は、洗礼を受けた元死刑囚の袴田巌元被告を東京ドームでのミサに招待したそうです。
この中で、法王にとっても、日本のキリスト教の歴史においても。最もかかわりが深い長崎の爆心地公園での、メッセージの発信が最も注目されます。
筆者も以前爆心地公園を訪れたことがありますが、原爆の投下場所が、天気が悪かったために、当初予定されていた小倉から長崎に変更され、長崎のなかでも、たまたま一瞬の雲が晴れた場所が投下地点となったと聞きました。それは昼食準備の時間であったために、偶然防空壕で、遊んでおいでといわれた少女ひとりだけが助かったという話を聞きました。
この地で、核廃絶に対し、どのような強いメッセージが出されるのか注目されます。

ローマ法王来日理由に関するみんなの反応
みんなの感想
世界の良心
リーダーは聞く耳持たず、急な進歩の文明に警鐘鳴らしてください、銃声の中で。
ネットの反応
単なるスローガンは意味がない。具体的にどうするのか。核兵器の多くはカトリック系の国にある。
みんなの感想
「核兵器廃絶」を訴えるのならば、核非保有国の日本ではなく、アメリカ、中国等々の核保有国に直接乗り込んで直談判すべきである。
ネットの反応
ただの“政治パフォーマンス”にしか見えず、とても残念である。
みんなの感想
日本で言って何の意味があるの?
中・露・北など保有国で言えば?
出典:ヤフコメ
厳しい意見、冷めた意見が多いようです。しかし、フランシスコ法王は単にスピーチやミサをするこれまでの法王とは異なり、キューバとアメリカの国交回復を後押しするなど政治的にも行動的な法王ですので、期待したいところです。
まとめ
ローマ法王来日の理由となぜこの時期なのかについて、まとめました。
ココがポイント
- いろんな意味で思い入れの深い長崎の地を訪れたい
- 厳しい国際情勢の今、核廃絶の強いメッセージを爆心地から発信することに法王としての使命を感じた
- 人柄は親しみやすく行動的で、世界的に山積する問題に対し何かしてくれるのではという期待がある
世界の約13億人のカトリック教徒や、カトリックの国の指導者に影響を及ぼす可能性があるフランシスコ法王の来日が、世界の平和や山積する様々な問題解決への一歩になることを期待したいところです。
